スマートロジスティクス
デジタルを活用した医療流通プラットフォームの構築
社会課題流通在庫管理の高度化が求められる医薬品流通
近年、希少疾病薬を含め、高額医薬品やバイオ医薬品、再生医療等製品などのスペシャリティ医薬品市場が拡大しています。スペシャリティ医薬品は、高額であることに加え、厳格な温度管理や在庫管理、セキュリティ管理が求められます。加えて後発医薬品の市場も拡大する中で、従来にも増して製薬企業と医薬品卸、医療機関・保険薬局との密な情報共有と、これによる医薬品の流通在庫管理の徹底と需給調整、精緻な需要予測に基づく最適な生産・輸入計画の策定が求められています。こうした背景の下、医薬品の供給不足や在庫の偏在による高額医薬品の廃棄ロスが課題であり、課題解決に向けた仕組みの確立が急務となっています。
いついかなる時も、必要とされる方に必要な医薬品をお届けするためには、安心・安全かつ安定的な医薬品流通と社会コストの低減を実現する仕組みを構築することが必要不可欠です。
また、2024年にはトラックドライバーの働き方改革が求められるとともに、物流人材の人手不足も課題となっています。長期的には少子化による労働人口の減少も予想されており、少ない人手でも高品質な医薬品流通を維持できる仕組みづくりが必要となっています。
スズケングループの取り組み医療流通プラットフォームの強化
スズケングループではこれまで、医薬品が製薬企業の工場や物流センターから患者さまの手元に届くまでのサプライチェーンにおいて独自の「医療流通プラットフォーム」を構築し、安定供給や品質管理の強化、流通在庫の最適化を図ってきました。今後は、デジタル技術を導入することで医療流通プラットフォームを強化し、「スマートロジスティクス」の実現を目指していきます。この仕組みによって、市場に流通する在庫のリアルタイムでの把握や、輸送・保管状態の見える化が可能になり、市場の需給調整による医薬品の偏在防止やより正確なトレーサビリティの確保が可能になります。流通在庫の最適化を図り、需給調整機能による医薬品廃棄ロスの削減や、輸送に伴うCO2排出量の削減にもつなげ、医薬品物流における社会コストの低減に貢献していきます。
医薬品流通のリアルタイムの可視化と最適化
2022年4月から、ソフトバンク株式会社と協業し、医薬品流通のDX実現に向けて大手ドラッグストアも加わった実証実験を開始しています。当社グループが流通過程で収集した医薬品の出荷・在庫情報を集約し、ソフトバンクの通信インフラを活用してリアルタイムに可視化。各拠点の流通在庫情報は医療機関や保険薬局、製薬企業に共有します。在庫量と発注量の適正化を図ることで、不動在庫や医薬品廃棄ロスの削減、配送の効率化を目指します。
また、2023年4月にはお得意さまが発注した商品の納品日・欠品時の代替品をスマートフォン、パソコンで簡単に確認できる「納品予定アプリ・納品予定お知らせサービス」の提供を開始。今後は在庫の見える化の仕組みと既存の発注・物流業務を連携することで、新たな機能追加やコラボポータルとの連動による情報連携も視野に入れています。
キュービックスシステムによるトータル・トレーサビリティ
2017年から、スペシャリティ医薬品のトレーサビリティシステム「キュービックスシステム」を展開しています。ICタグを通じてデータを読み書きするRFIDとIoT技術搭載の専用保管庫を使用し、医薬品の輸送から院内保管、戻り品の返却、再納品に至るまで、24時間365日、リアルタイムで医薬品の管理状態を遠隔モニタリングすることができます。これにより、再販売の可否判断や在庫状況の把握が可能となり、医薬品廃棄ロスの削減や在庫偏在の防止に貢献しています。また、自動発注や不動品・未使用在庫の入れ替え提案などを自動化でき、医療機関の業務負荷軽減にもつながっています。
首都圏物流センターにおける自動化、省人化
2024年4月、「首都圏物流センター」が稼働しました。これまで培ってきたメーカー物流の機能やノウハウに加え、製造業務エリアを併設した業界初の卸物流拠点です。当センターの稼働を起点に、モノと情報をつなぐ新たな事業モデルを構築し、「スマートロジスティクス」を実現していきます。
当センターでは、AI による文字・画像認識技術やロボット技術を活用し、入荷入力や棚卸などの単純作業や重作業の自動化、さらには無人搬送車による構内搬送の省人化を図り、庫内作業者を従来の3分の1程度まで削減しました。これにより、物流業界の人手不足に対応するとともに、品質精度が求められる業務に人手を充当することが可能となりました。全庫内作業の自動化率を90%以上に高めつつ、出荷精度をセブンナイン(99.99999%)以上とすることを目指しています。
当センターのカバーエリア内の医療機関・保険薬局には支店を中継することなく直接医薬品を納品することが可能となり、納品までのリードタイムの短縮および配送の効率化を実現しています。製品の入荷時や輸配送時には、24時間365日の温度監視や、社内資格である「GDPスペシャリスト」取得者による庫内業務や配送業務の運用・管理、教育、監査を行うなど、これまでに培ってきたスペシャリティ医薬品流通の技術を活用し、GDPガイドラインに準拠した品質管理を徹底しています。建物には最新の免震・耐火構造を採用し、全設備が72時間連続で稼働可能な専用自家発電機の配備など、有事の際にも稼働し続けられる機能を備えています。